『姫路城史』(橋本政次著)には「内濠には屋形船を浮べ、本城、武蔵野などから西屋敷へ往来するには、この屋形船を用ひた。」と、姫路城内堀においても船が使用されていたことが記されてます。
どんな種類の船が使われたかについての記録は現在のところ見つかっていません。遊覧、城への出仕の渡し、船場川を通して、生活用品の搬入などに使われましたが、その種類が目的によって違ったことは推測できます。その一つに、この地域の川船があったことは間違いないと考えられます。
西播磨地方の川船の研究は、発見されている古文書も少なく、十分といえませんが、加古川、市川、揖保川、千種川の船運史についての諸先輩の研究の中から、川船、主に高瀬舟についての資料を集め、当時の工法、道具を用いて実船の復元を試みました。
実際の設計に当たっては、皆さんに乗船して水面から天守閣を見ていただくいたり、折々の催しに使うといった実用的側面から、強度や安全性を配慮して変更せざるをえない点もありましたが、できるだけ外見上損なわれないように、また当時の方法に基づいて建造するよう心がけました。
1. 船の種類
姫路城の堀に浮かべる船として西播磨地方の高瀬舟と決めました。
2. 船体の材料
姫路では川船も現在の木造漁船も日向杉を用いるのが普通で、長尺の板が容易に手に入らないこともあって、造船所で長年寝かせていた杉を使うことにしました。残念ながら節が多く良い木とはいえませんが、昔も必ずしも最高の材料で建造するということでは無かったでしょう。
3. 推進手段
お堀なので、環境保全の制約も生じる可能性があるので、櫓、竿、または電動モーターを単独もしくは組み合わせて使うことを考えました。
4. 安全性に関しては小型船舶の基準を満たすようにする。
5. 乗員は二人で、船尾で船頭が操船を行い、船首のガイドが着岸、離岸、
回頭時などに船頭の助っ人となります。
6. 屋形は船の使用目的によって替えたり、取り外すことができるように工夫します。
外せば、堀の橋の下をくぐれます。
船の基本寸法を設定しました。
1. 長さ9.45m幅2.29m深さ(吃水)軽荷状態0.12m
満載状態0.20m
重量軽荷状態1250kg
満載状態2230kg
水面からの最大高さ船体0.8m
屋根(取り外し)最大1.6m
2. 乗員・乗客計14名
3. 推進手段櫓、電動プロペラ、竿
4. 材料木造船体杉檜、欅、樫など